AIが文章を書き、絵を描き、音楽を奏で、答えを返してくれる時代になった。便利になったのは間違いない。けれど、不思議なことに、私たちが本当に「欲しい」と感じるものは、少しも減っていない。むしろ、身の回りのものに対する眼差しが、以前よりも静かに、深くなっているように思う。
この媒体は、そういう感覚の中から生まれた。
大量生産の渦の中で、見えてきたもの
長年、本物の贅沢品の世界に身を置いてきた。その傍らで、自分の資産も少しずつ育ててきた。その両方の時間の中で、一つの感覚が、心のうちに静かに積まれていった。
それは、『良い物』には、それなりの審美眼が必要だということだ。
大量生産、大量消費、安かろう悪かろうに翻弄される人を、たくさん見てきた。流行の速度に押し流され、買ったはずの物が手元に残らず、心の中に満たされないものだけが堆積していく。そういう買い物を、私はしたくなかった。そして、この媒体を訪れてくれる方にも、そういう買い物から静かに距離を置いてほしいと思っている。
『良い買い物』とは何か
どんな人が、『良い物』を、『良いタイミング』で、『良い買い物』をしているのか。長く観察していると、なんとなく輪郭が見えてくる。
『良い買い物』をしている人は、自分の「欲しい」という感情に素直だ。けれど同時に、自分の置かれている環境——資産状況、収入、支出——が常に念頭にある。そして、「欲しい」と思ったものが、そのタイミングで無理なく買える。
その時に生まれる多幸感が、一時のものではなく、長く続く。手に入れた物が、日々の暮らしの中で、静かに喜びを返し続けてくれる。
こういう買い物をするためには、当然ながら**『買える環境』**が要る。そして、その環境は、一朝一夕には築けない。
シーソーのように
毎日の仕事と、家計簿と、投資。
けれど、投資ばかりでは人生がつまらない。自分の価値観に共鳴する体験が、どうしても必要になる。
大切なのは、そのシーソーのバランスだ。
資産は、ただ貯めるためにあるのではない。適宜、有効に使えることが、人生の真の豊かさをつくる。貯めることと使うことは、対立しない。両方を、美しくやる方法がある。この媒体は、その方法を、一緒に探していく場にしたい。
四つの柱
中今という媒体は、以下の四つのテーマを中心に据えて進んでいく。
一つめ、自分を喜ばせるためだけの物。 見せびらかすためではなく、自分の内側の静けさを満たしてくれる物のこと。誰にも気付かれなくても、持っている自分だけが知っている満足。
二つめ、後世に受け継がれていく物。 一生ものという言葉を、安易に使いたくはない。けれど本当に、時間を経て価値を増していく物は存在する。そういう物を、じっくり選び、育てていく視点。
三つめ、近しい人に紹介したくなる物や技術。 誰かに話したくなる、体験させたくなる、贈りたくなる。そうやって人と人の間を静かに行き来していく商品や、職人の技。
四つめ、贅沢をするための資産形成術。 贅沢は、悪いことではない。ただし、それを支える土台がなければ、一時的な享楽で終わる。稼ぎ、貯め、育て、そして使う。この四つのリズムを、自分のペースで刻む方法。
中今(なかいま)という言葉について
タイトルに据えた『中今』は、神道に由来する古い日本語だ。過去でも未来でもない、今この瞬間のことを指す。
ただし、ただの現在ではない。過去の時間を全て受け止め、未来へと繋がっていく、**永遠につながる「今」**のことだ。西洋の哲学者ボエティウスが nunc stans(立ち止まる今)と呼んだ概念にも、どこか似ている。
「欲しい」と思った瞬間、それは過去の積み重ねの上に立ち、未来の暮らしへ繋がっていく。その瞬間を大切に扱うことが、結果として、長く続く多幸感を生む。そう信じている。
書き手について
書き手は、製造業の現場で長く品質管理に携わってきた一人の会社員であり、一人の投資家だ。名前も顔も、当面は出さない。けれど、語る内容は、すべて自分が実際に使い、考え、買ってきたものに基づく。
あくまで個人の経験則に基づく価値観であることは、先に断っておきたい。万人に当てはまる答えではない。ただ、同じような温度感で物事を見てくれる方には、きっと役に立つ。
これから
最初の三ヶ月は、「AI時代でも、欲しいものは沢山ある」というテーマで書く。
身の回りにある物——MacBook、iPhone、万年筆、紙、鞄、篠笛、三味線、懇意にしている証券会社、ネット銀行、コミュニティ——それぞれについて、なぜこれなのか、どこに価値を見出しているのか、どう選んできたのか。そして、それを支える静かな資産設計について。
派手な煽りも、ランキングも、「今すぐ買え」もない。
ただ、本当に欲しいと思える物と、それを長く愛せる暮らしについて、静かに話したい。
どうぞ、ゆっくりと、お付き合いください。
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