四十四歳になりました。独身、中小企業の会社員です。
ここ数年の相場と、実物資産の値上がりに助けられて、総資産が五千万円台をたもつようになりました。
先に申し上げておきたいのですが、私には取り柄がありません。何かの資格を持っているわけでもない。人より秀でた才覚があるとも思っていません。毎朝きちんと起きられず、やるべきことを先送りする性質は、四十四年かけて一度も直っていません。
それでも、この数字になりました。
だから書こうと思いました。才能のある人の話は、聞いても真似ができません。取り柄のない人間がどこで分岐したのかのほうが、たぶん役に立ちます。
何をしたか、ではなく、何が起きなかったか
振り返ってみると、私は節約をしていません。締めた覚えがないのです。
代わりに起きたのは、収入が増えても支出が増えなかった、という一事でした。
二十代の頃の暮らしの形が、そのまま四十代まで続いている。それだけです。意志で我慢したのではなく、増やす必要を感じなかった。ここは自慢ではなくて、むしろ性格の問題だと思っています。
手取りが増えたぶんが、丸ごと余る。その余りをどこに置くか、という話が残ります。
置き場所を三つに分けた
置き場所は、おおよそ三つに分けています。
| 置き場所 | 性格 |
|---|---|
| 実物資産(金属など) | すぐには現金にならない。値動きは株より穏やか |
| 日本の高配当株 | 毎年、配当が入ってくる |
| 投資信託と、海外の高配当 ETF | 指数に任せて、ゆっくり増える |
それぞれの比率は、伏せておきます。
一つに寄せていません。これは賢いからではなく、どれが正解か分からなかったからです。分からないものを分からないまま持つには、分けておくしかありませんでした。
結果として、この分け方がインフレの局面で効きました。現金だけを持っていたら、同じ額のまま買えるものが減っていたはずです。実物資産は値上がりし、株は配当を出し、指数はゆっくり増えた。私が偉かったのではなく、置き場所を分けておいたことが偉かったのだと思っています。
続いたのは、三つだけ
- 毎月、決まった額を自動で積む。 金額の多寡より、考えなくていい仕組みにしたことが効きました。私は意志が弱いので、意志を使わずに済む形にしないと続きません
- 入ってきた配当を、使わずに戻す。 配当が生活費に混ざると、増えている実感が消えます。別の口に入れて、また買う
- 手仕事の副業を、細く長く続けた。 本業のほかに、手を動かして稼ぐ道を一本持っています。金額そのものより、「会社の給与だけではない」という状態が、気持ちの上で大きかった
三つとも、派手ではありません。派手なことは一つもしていません。
「枕を高くする」ということ
この連載の名前は、そこから取りました。
資産形成の話は、たいてい金額の話になります。いくら貯めたか、何%増えたか。でも私が本当に欲しかったものは、金額ではありませんでした。
夜、余計なことを考えずに眠れること。
来月の支払いを思い出して目が覚めない。会社で理不尽なことがあっても、辞めたら終わりだと思わずに済む。欲しいものが現れたときに、値札を見て諦めなくていい。
その状態を作るための道具が、たまたまお金だった、というだけのことです。だからこの連載では、金額そのものより、**その金額が何をもたらしたか(あるいは、もたらさなかったか)**のほうを、多く書くつもりでいます。
実際、資産が五千万円台に乗った日に、何も起きませんでした。空も晴れなかったし、人生も変わりませんでした。その「何も起きなさ」こそが、いちばん書いておきたいことかもしれません。
これから書くこと
- 支出が増えなかった理由を、もう少し細かく
- 高配当株を買うときに、私がやった失敗
- 怠惰な自分を、意志で直そうとして全部失敗した話
- 独身の四十代が、四十年後の自分に用意しておくもの
- 親族の相続実務が、ある日まるごと自分のところに来たときの話
順に書いていきます。
本記事は、筆者個人の経験の記録です。 特定の金融商品の購入を勧めるものではなく、投資助言でもありません。資産の運用はご自身の判断と責任でお願いいたします。数字はすべて概算で、細部は伏せてあります。