№ mmxxvi · ix a quiet journal
支えるしくみ

取り柄も、資格もない

四十四歳、資産五千万円台までの実際

四十四歳になりました。独身、中小企業の会社員です。

ここ数年の相場と、実物資産の値上がりに助けられて、総資産が五千万円台をたもつようになりました。

先に申し上げておきたいのですが、私には取り柄がありません。何かの資格を持っているわけでもない。人より秀でた才覚があるとも思っていません。毎朝きちんと起きられず、やるべきことを先送りする性質は、四十四年かけて一度も直っていません。

それでも、この数字になりました。

だから書こうと思いました。才能のある人の話は、聞いても真似ができません。取り柄のない人間がどこで分岐したのかのほうが、たぶん役に立ちます。

何をしたか、ではなく、何が起きなかったか

振り返ってみると、私は節約をしていません。締めた覚えがないのです。

代わりに起きたのは、収入が増えても支出が増えなかった、という一事でした。

二十代の頃の暮らしの形が、そのまま四十代まで続いている。それだけです。意志で我慢したのではなく、増やす必要を感じなかった。ここは自慢ではなくて、むしろ性格の問題だと思っています。

手取りが増えたぶんが、丸ごと余る。その余りをどこに置くか、という話が残ります。

置き場所を三つに分けた

置き場所は、おおよそ三つに分けています。

置き場所性格
実物資産(金属など)すぐには現金にならない。値動きは株より穏やか
日本の高配当株毎年、配当が入ってくる
投資信託と、海外の高配当 ETF指数に任せて、ゆっくり増える

それぞれの比率は、伏せておきます。

一つに寄せていません。これは賢いからではなく、どれが正解か分からなかったからです。分からないものを分からないまま持つには、分けておくしかありませんでした。

結果として、この分け方がインフレの局面で効きました。現金だけを持っていたら、同じ額のまま買えるものが減っていたはずです。実物資産は値上がりし、株は配当を出し、指数はゆっくり増えた。私が偉かったのではなく、置き場所を分けておいたことが偉かったのだと思っています。

続いたのは、三つだけ

  • 毎月、決まった額を自動で積む。 金額の多寡より、考えなくていい仕組みにしたことが効きました。私は意志が弱いので、意志を使わずに済む形にしないと続きません
  • 入ってきた配当を、使わずに戻す。 配当が生活費に混ざると、増えている実感が消えます。別の口に入れて、また買う
  • 手仕事の副業を、細く長く続けた。 本業のほかに、手を動かして稼ぐ道を一本持っています。金額そのものより、「会社の給与だけではない」という状態が、気持ちの上で大きかった

三つとも、派手ではありません。派手なことは一つもしていません。

「枕を高くする」ということ

この連載の名前は、そこから取りました。

資産形成の話は、たいてい金額の話になります。いくら貯めたか、何%増えたか。でも私が本当に欲しかったものは、金額ではありませんでした。

夜、余計なことを考えずに眠れること。

来月の支払いを思い出して目が覚めない。会社で理不尽なことがあっても、辞めたら終わりだと思わずに済む。欲しいものが現れたときに、値札を見て諦めなくていい。

その状態を作るための道具が、たまたまお金だった、というだけのことです。だからこの連載では、金額そのものより、**その金額が何をもたらしたか(あるいは、もたらさなかったか)**のほうを、多く書くつもりでいます。

実際、資産が五千万円台に乗った日に、何も起きませんでした。空も晴れなかったし、人生も変わりませんでした。その「何も起きなさ」こそが、いちばん書いておきたいことかもしれません。

これから書くこと

  • 支出が増えなかった理由を、もう少し細かく
  • 高配当株を買うときに、私がやった失敗
  • 怠惰な自分を、意志で直そうとして全部失敗した話
  • 独身の四十代が、四十年後の自分に用意しておくもの
  • 親族の相続実務が、ある日まるごと自分のところに来たときの話

順に書いていきます。


本記事は、筆者個人の経験の記録です。 特定の金融商品の購入を勧めるものではなく、投資助言でもありません。資産の運用はご自身の判断と責任でお願いいたします。数字はすべて概算で、細部は伏せてあります。