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支えるしくみ

売らずに、受け取る

高配当株を選んだ理由と、お金に振った三つの役目

株式投資や貴金属への投資は、人生を考えることの一助になります。

大げさに聞こえるかもしれません。けれど、いまの時代にお金のことを考えるのは、さまざまな思想や文化や考え方に触れることと、ほとんど同じだと感じています。どの会社に自分のお金を預けるか。何を良いと思い、何を信じないか。お金の置き場所には、その人の考えがそのまま出ます。

今回は、私が高配当株にたどり着くまでの話です。

始めた理由

株に興味を持った理由は、単純でした。

お金と、余暇の時間と、気持ちの余裕。 この三つを得るには、どうすればいいか。そう考えたのが始まりです。

その根には、以前書いた両親の背中があります。

両親は、人柄も稼ぐ力も人並み以上の人たちでした。だからこそ私は、そのことに無自覚なまま、ずいぶん甘えてしまいました。そして両親は、借金と教育費と祖父母の介護に疲れ果てていました。

お金と時間に追われる暮らしが、どういうものか。それを間近で見てきたことが、私を株に向かわせたのだと思います。

まず、出ていくほうから

いきなり株を買ったわけではありません。最初にやったのは、家計の見直しでした。

まずは保険です。火災保険を残して、あとはすべて解約しました。 独身で、養う家族がいない。会社員として健康保険に入っていて、医療費が膨らんでも上限がある。いざというときは貯えで賄える。私の条件では、それで足りると判断しました。家族がいる方なら、答えは違ってくるはずです。

それから、使っていない定額の契約をいくつも解約しました。

そして、振り返ってみると大きかったのは、安い賃貸に住んでいたこと、養う家族も車も持ち家もなかったことです。何かを我慢したわけではなく、最初から背負っていなかった。以前「私が賢いのではなく、そういう配置に生まれなかっただけ」と書いたのは、このことです。

ただ――安い賃貸は、人生を豊かに過ごすうえでは、かなり気をつける必要があります。 これは身をもって感じていることで、話が長くなるので、またの機会に書きます。

最初の一株

証券口座を開いて、最初に買ったのは三つでした。

  • 貴金属を扱う会社
  • 食品の会社
  • それから、どこが良いのかも分からない、質の低い銘柄

驚いたのは、食品の会社と貴金属の会社から届いた配当でした。

何もしていないのに、お金が振り込まれてくる。会社の儲けの一部が、株を持っているというだけで自分に分けられる。仕組みとしては知っていたはずなのに、実際に口座に入ってきたときの驚きは、いまでも覚えています。

数年、様子を見ました

YouTube と本で学びながら、少額で数年、様子を見ました。

そこで学んだことの一つが、世界の多くの資産家が、昔ながらの資産を持ち続けているということです。金のような、何百年、何千年と価値を認められてきたもの。新しい金融商品がどれだけ出てきても、それを手放さない人たちがいる。私が貴金属を買い続けてきた理由の一つは、ここにあります。

そして、正直に書きます。

最初は、トレードばかりしていました。

額は決めていたものの、値動きを見ては買い、少し上がれば売る。質の低い銘柄ほど値動きが大きいので、それが面白くもありました。

結果、手持ちのお金は、まったく増える気配がありませんでした。 増えたり減ったりを繰り返して、数年経っても元の場所にいる。時間と気持ちだけが削られていました。

短期売買を、やめました

そこで、やり方を変えました。

私の場合、初心者で、資産も少ない。 だから短期の売買はしない、と決めました。

独身なので、資産のうち株の比重を大きくする、というリスクは取れます。家族を路頭に迷わせる心配がないからです。けれど、現金を厚く持っておかないと、気持ちが落ち着かない。 これは性分です。

そこで、足りない分は自分が働くことで賄い、貴金属で補助の動力をつける、という形にしました。

そのうえで選んだのが、優良な企業の、高配当株です。

これには、はっきりした難しさがあります。優良な企業の株が「いまはお買い得だ」と見極めないと、買えないのです。見極めには知識も経験も要る。そして最後は、飛び込む決断も要る。初心者にとって、ハードルの高い投資であることは変わりません。

それでも、売らないと最初に決めてしまえば、株価の上下に振り回されずに済みます。値段がいくらになろうと、持っている限り、配当は定期的に入ってくる。

確実な道ではあります。ただし、時間は十年単位でかかります。 私の場合、その十年で、持っている会社が 336 社になりました。

インデックスも、良い道です

同時に、手数料の安い全世界株式のインデックス投資信託も買い始めました。

これが優れた資産運用であることは、間違いありません。値上がりも、高配当株より早い。

ただ、日々の暮らしの中で、現金としての恩恵を受けにくいのです。インデックスは、配当を外に出さずに中で再投資し続ける仕組みのものが多い。お金として受け取るには、少しずつ売って取り崩すことになります。

この「少しずつ売る」が、私には使いにくかった。

前回、眠れるかどうかは、売らずに済むかどうかで決まると書きました。取り崩しとは、裏を返せば、自分で売る決断を毎月繰り返すということです。下がっている月にも売らなければならない。これが、私の性分には合いませんでした。

後から気づいたこと

最初は何も考えていませんでした。けれど、日本の高配当株(円)と、全世界株のインデックスや米国の ETF(ドル建ての資産)を両方持っていたことで、為替の揺れによるリスクを、多少は和らげられていたようです。

円が安くなれば、ドル建ての資産が円換算で膨らむ。円が高くなれば、その逆。どちらか一方だけに寄せていたら、為替の動き一つで資産全体が揺さぶられていたはずです。

意図してやったことではありません。結果として、そうなっていました。

お金に、三つの役目を振る

こうして、いまの形になりました。投資先ごとに、役目を完全に分けています。

置き場所役目中身
インデックス投資信託老後のためのお金毎月およそ四万円を、NISA と iDeCo で積み立て
高配当株いまを潤すお金売らずに持ち続け、配当を受け取る
貴金属資産の補助すぐには現金にならないが、株ほど揺れない。使いようによっては、別の価値にも変えられる

老後のお金は、触らずに育てる。いまのお金は、売らずに受け取る。補助の資産は、忘れておく。

役目が分かれていると、一つが下がっても、他の二つの役目までは揺らぎません。 株価が下がっても老後資金は十年以上先の話ですし、配当は値段ほどには減りません。

模索は、いまも続いています

自分の知識の量、経験、家族の構成、資産の状況。それに合うやり方を、株を持ちながら探してきました。そして、いまも探しています。

ですから、ここに書いたのは正解ではありません。独身で、現金が厚くないと落ち着かず、売る決断が苦手な、私という一人の人間に合った形です。

あなたの条件が私と違えば、合う形も違うはずです。家族がいれば、保険の答えは変わる。売る決断が苦にならない人なら、インデックスの取り崩しのほうが合理的かもしれない。

大事なのは、たぶん形そのものではなく、自分の条件を知ったうえで、お金に役目を振ることなのだと思います。


本記事は、筆者個人の経験の記録です。 特定の金融商品・銘柄・保険の解約を勧めるものではなく、投資助言でもありません。保険の要否はご家族の状況によって大きく変わります。税制は執筆時点のもので、資産の運用はご自身の判断と責任でお願いいたします。 本記事に広告は含まれません。